春を呼ぶ雪原のストライプ「融雪剤散布」

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最近は暖かい日が続く十勝大樹町ですが、畑にはまだまだ残雪が残っています。皆さんはこの時期、このような光景を見かけたことはありませんか?何をしているかというと、畑の雪が早く融けるように融雪剤を撒いているのです。今回は春を呼ぶ雪原のストライプ、融雪剤の散布についてです。

融雪剤の正体は?

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日昭牧場が撒いている融雪剤の正式名称は「防散融雪苦土炭酸カルシウム」(ぼうさんゆうせつくどたんさんカルシウム)。なんだか呪文みたいですが、「防散」は風に飛ばされにくい工夫をしている、つまり粉より大きい粒状だということ、「融雪」は雪を融かすためにカーボン(炭)で色を付けていることを指します。白より黒の方が太陽の熱を吸収しやすいからですね。「苦土」はマグネシウム、「炭酸カルシウム」はカルシウムの炭酸塩(貝殻やサンゴなどの主成分)のこと。

つまり、マグネシウムとカルシウムで土壌を改良しつつ、黒い色と風に飛ばされない形状で雪を早く融かそう!というものなのです。

なぜ融雪剤を散布するの?

そもそもなぜ早く雪を融かしたいのか。日昭牧場では牛の餌となる牧草とデントコーンの畑に融雪剤を撒くのですが、牧草は多年草のため、雪の下でも株や地下茎は生きています。ところが冬の間に土が凍って激しく盛り上がる(凍上といいます)と、牧草の根が切れてしまいます。すると牧草は枯れ、新しい芽も出ず、丸裸の畑に。さらにそのままにしておくと牧草ではなく雑草が生い茂り、牧草の収量が減ってしまう悪循環を招いてしまいます!それらを防ぐためには雪を融かして畑の状態を確認し、雑草が生える前に牧草の種を植える必要があるのです。またデントコーン畑の春作業に早く取り掛かれるというメリットや、草地の生育を促す効果もあります。

つまり、融雪剤を撒く理由は「ダメージを受けた畑をいち早く修復し、畑作業に素早く取り掛かれるようにするため」。融雪剤の効果は抜群で、撒かなかった時と比べて約710日間、雪融けが早まると言われています。

今年は自社でも散布してみた!

融雪剤の散布はこれまで「どうしても早く雪を融かしたい畑」を選んで業者さんに頼んでいました。しかし他の農家さんとの兼ね合いもあり、ベストな散布日にならないこともしばしば。そこで今年から自社でも散布することにしました。

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使用するのはタイヤではなくゴム製のクローラー(無限軌道)を装着したトラクター。「クローラートラクター」と呼んでいます。雪に埋まることなく走行できる優れものです。後ろにつけたブロードキャスター(黄色い部分)の中に融雪剤を入れ、畑に撒いていきます。

※ブロードキャスター...粒状の肥料や種子の全面散布に使用するトラクターに取り付ける機械。

今年は約4日間かけて牧草畑とデントコーン畑、合わせて約150haを自社で撒きました。クローラーでの自走は移動時間がかかるため、遠い場所の畑など約120haは業者さんにお願いしたので、合わせて270haに融雪剤を撒いたことになります。これでもすべての畑ではありません。改めて、広い畑を管理しているのだなあと思います。

さて、融雪剤の散布が始まるといよいよ春の始まりです。春のストライプを眺めながら、なんだかワクワクしています!

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