日昭牧場の理念「酪農はすべてつながっている」の重要なピース、バイオガスプラント

日昭牧場内にはバイオガスプラントがあります。バイオガスプラントとは有機性廃棄物(バイオマス)を微生物の力でメタン発酵させ、発生したメタンガスをエネルギーにする施設のこと。

日昭牧場のバイオガスプラントは、理念である「酪農はすべてつながっている」の重要なピース。具体的には牧場から出る牛のふん尿を発酵させたバイオガスで発電し電力会社に売電するとともに、発電後に残った消化液を液肥として畑に撒いて、牧草やデントコーンを育てています。牛のふん尿をやっかいなものではなく循環型酪農を支える大切なものとして扱い、活用しています。

20221209_001.jpg

日昭牧場パンフレットより

臭い「におい」を、どうにかしたい一心で

日昭牧場のプラント建設は2013年。北海道内でもかなり早い時期の導入だと思います。廃棄物として処理されてきた牛のふん尿で発電できる!という部分がクローズアップされがちなバイオガスプラントですが、実は導入のきっかけは「ふん尿のにおい対策」でした。

日昭牧場は大樹町の市街地から割と近い場所にあるため、近隣住民の方になるべくご迷惑にならないよう、牧場のにおいを軽減したいと考えていました。そこでバイオガス発電に対する機運が高まり、プラント建設費用の補助や電気の定額買取りといった事業が次々と立ち上がった時期に「今だ!」と導入を決意。稼働後は発電した電力を売電して、建設費用の回収や維持費の捻出もできると考えました。

バイオガスプラントでうまれた「つながり」

日昭牧場のバイオガスプラントでやっていることを書き出してみます。

  • 牛のふん尿から発電→売電
  • 副産物として「消化液」と「固形物(分離カス)」を産出
  • 消化液を液肥として牧草畑やデントコーン畑に撒く
  • 液肥の一部を畑作農家に提供
  • 分離カスを通路に撒いて滑り止めに
  • バイオガスをボイラー燃料にして温水にする
  • 発酵槽を温水で温める
  • パーラー(搾乳施設)で温水を使う

牛のふん尿が電力になり、肥料になり(つまり牛の餌を育て)、熱になり、と形を変えて活かされているのがお分かりいただけると思います。まさに「酪農は、すべてつながっている」が実感できるサイクルです。

 また、現在の世界情勢により肥料価格の高騰が続き、液肥ニーズの高まりを感じています。加えてボイラー燃料としてバイオガスを使うので灯油の使用量がかなり抑えられ、とても助かっています。

20221209_002.jpg
バイオガスを燃料とするボイラー

導入目的であった「におい対策」についても、非常に満足しています。液肥として畑に撒きながら、「においが全然違う!」と実感。正直、導入前は撒いている本人ですら頭痛がするほど臭いときもありました。近隣の方々、スミマセン。

そして液肥はにおいが少ないだけでなく、さらさらとしていて粘り気がなく、固液分離により固形物の混ざりがありません。このため牧草の品質を低下させる原因の「異物混入」がなくなりました。純度の高い肥料なので牧草やデントコーンの生育と品質がアップしたのも嬉しい結果です。

 働く人の健康や環境に配慮し、生産効率が向上すること。これらすべてが「働きやすさ」につながっています。バイオガスプラントは、日昭牧場が目指す「気持ちよく、長く働ける環境づくり」の大きな力になっています。

いいことづくしのバイオガスプラントがもっと広がってほしい!そして停電時の非常用電源確保のために、発電した電気を自家使用できればさらによくなると考えています。

※電力会社と「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を契約しているので、発電した電力は全量売電しています。また日昭牧場では非常時に備え、別の自家発電機を導入しています。

【豆知識】バイオガスプラントの仕組み

「そもそもバイオガスプラントってよくわからない」という方のために、ここからはバイオガスプラントの仕組みを日昭牧場の例でご説明します。

20221209_003.jpg
プラント内にある説明図

上図のような仕組みになっており、日昭牧場の設備規模は、ふん尿受け入れ750頭分、ガス発生量1,817㎥、発電量3,240kWh(すべて1日当たり)です。
また、プラント内の工程はこのようになっています。

  1. 原料受入 牛のふん尿をプラントに投入。
  2. 発酵 メタンガスを発酵させる。火気厳禁!
    20221209_004.jpg

    ただいま発酵中

  3. ガス精製(脱硫) ガスに含まれるにおいと金属腐食のもと、硫化水素を取り除く。
    20221209_005.jpg

    この装置で硫化水素を取り除きます

  4. 発電(電気、熱) ガスエンジン発電機で発電し、売電する。一部はボイラーで温水にし、発酵槽などを温めるのに使う。
    20221209_006.jpg

    これが発電機です!

  5. 消化液生成(液肥)
    消化液を固体と液体に分け(固液分離)、液体分を液肥として畑に散布する。固体分は滑り止めに通路に撒くなどして活用。
    20221209_007.jpg
    消化液を貯めておく貯留槽。夏の写真なので満タンですが、季節により量が変わります。

仕組みや工程を理解してもう一度最初から読んでいただくと、より理解が深まると思います。