リスクマネジメントとしての「三番牧草」

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牧草は牛の餌となるイネ科の植物だというのはご存じの方も多いと思います。ただ一口に「牧草」といってもいろいろな品種があり、日昭牧場で主に栽培しているのは「チモシー」という種類。そして今年から「オーチャードグラス」という品種も栽培を始めました。理由はリスクマネジメント。
今回は、オーチャードグラスを栽培するに至った経緯などをお話ししたいと思います。

チモシーは6月中旬に「一番牧草」、8月下旬に「二番牧草」と2回収穫します。この間約60日。(二番牧草の収穫については「二番牧草の収穫始まりました!」をご覧ください)

対してオーチャードグラスは刈った後の再生が早いため、6月上旬、7月下旬、9月上旬と、約50日間隔で3回収穫します。そう、「三番牧草」がある品種なのです。どの牧草でも3回収穫しているわけではないんですよ。

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見た目はチモシーと変わりませんね

チモシーは北海道のほとんどの地域でメインの牧草として栽培されています。特に1番牧草は作付面積も広いので、日昭牧場では収穫に1週間以上かかります。大事な牧草が雨に当たって無駄にならないよう、天候をにらみながら収穫するため、同じ地域では収穫時期が被ります。そうなると外注でお願いしている輸送用トラックや人員の手配がつかないこともしばしば。なかなか晴れの日が続かない年などは、取り合いと言っても過言ではありません。なぜなら収穫時期がずれると、せっかくの収穫最適期を逃してしまい、栄養価などが低下してしまうためです。牧草の出来が生乳の量や質を左右するため、どの農家も真剣です。

そこで考えたのが、収穫時期の被らないオーチャードグラスの栽培です。もともとチモシーだけでは1年分の牧草としては量が足りず、一部購入しているため、少しでも牧草の収量を増やそうという狙いもありました。初年度となる今年は約35haに作付け。これは1日で収穫できる広さで、万が一晴天が続かなくてもなんとかなるという算段です。また作付けしたのは牧場に近い場所で、輸送の時間短縮と、外注手配がつかない場合にも備えました。

つまり「三番牧草」とは、天候に左右されず、最適な収穫期を逃さないためのリスクマネジメントの一環なのです。

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1日で収穫できる35haと言っても、こんなに広いんですよ!

オーチャードグラスは、チモシーに比べて葉が多く、柔らかいのが特徴。さて牛さんは喜んで食べてくれるでしょうか?

さて収穫された牧草はバンカーサイロに積まれ、サイレージになります。
重要なのが「空気を抜いて嫌気発酵(けんきはっこう:酸素を使わない発酵)させる」こと。漬物と同じ理屈ですね。シートで覆った上に漬物石代わりのタイヤを乗せて、発酵させています。

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ところで、この大量のタイヤをシートの上に乗せるのもなかなか大変な作業なのですが、実は今年から新兵器を導入しました!どんな新兵器なのか?次回ご紹介したいと思います。お楽しみに!