子牛の保育園~哺育(ほいく)舎へようこそ

日昭牧場は授精・出産・哺育・育成までを一貫して行う「自家生産」の牧場です。
と言っても、酪農家じゃない人にとっては「へ~、そうなんだ」という感想しかないですよね。今回のテーマ「子牛の保育園」の前に、少し説明をさせてください。

日昭牧場が自家生産にこだわる理由

朝夕搾乳している牛ですが、ホルスタインだからと言って最初から乳が出るわけではありません。人と同じく出産して初めて出るようになります。子牛が生まれてから搾乳できるようになるまでには約2年半の月日が必要です。手間も時間もかかるため、現在では哺乳(ミルクを飲んでいる期間)や育成(人工授精までの期間)を外注したり、初妊牛(妊娠中で出産を待つ状態の牛)を購入したりと、酪農の分業化・効率化が進んでいます。

そんな手間も時間もかかる「自家生産」を続けている理由は、日昭牧場が「長く安定して続けられること」を理念とし、「拡大」より「充実」を重要視した経営と生産を行っているからです。牛の餌となる牧草やデントコーンは自家栽培、牛も授精から育成までを牧場で行うことにより、質を高めているのです。

※自家生産については「求人情報」も参照ください。
※餌の自家栽培については「二番牧草の収穫始まりました!」「リスクマネジメントとしての「三番牧草」」「デントコーン収穫はハーベスターで豪快に!」も参照ください。

子牛の保育園は床暖、ヒーター完備

前置きが長くなりました。やっとかわいい子牛の登場ですよ~。

子牛が生まれるとすぐに母牛とは離され、「哺育舎」と呼ばれる建物で育てられます。ちなみにこの哺育舎、今年5月から稼働を始めたばかりのピカピカの新築!子牛のために、さまざまな工夫を凝らしています。

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生後15日まではこのように、個室でVIP扱い。この時期はとにかく保温!保温!防寒対策がなにより重要です。これから冬を迎える北海道では特に神経を使います。なんせ子牛が活動できる限界温度は1013℃とされており、最低気温がマイナスになるこの季節が一年で一番気を使います。そんなわけで、新哺育舎の個室には床暖房が入っています。

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子牛もカーフジャケットとネックウォーマーで防寒します。この子牛はF1(エフワン)と呼ばれる、ホルスタインと和牛のハーフ。ホルスタインより一回り体が小さいので、体の熱が逃げやすいため特に手厚くしています。

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こちらはホルスタインの子牛で、ネックウォーマーのみ。首の太い血管を温めるだけでもかなり効果があります。ちなみに日昭牧場では人間用のネックウォーマーを使っています。

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生後15日を過ぎると集団哺育となり、生後2カ月まで粉ミルクを与えます。その後離乳して通常の餌になり、3カ月までこの哺育舎で育ちます。
集団哺育舎の上には保温のため、ヒーターが吊るされています。ほんのりあったかいです。

子牛のときの病気が一生を左右する

なぜこんなにも保温保温と騒ぐのか、それは子牛のときの病気が牛の一生に影響するからです。消化不良などで起こる子牛の下痢を見過ごすと、あっという間に脱水症状になります。また子牛が肺炎にかかると、例えそのとき治ったとしても成牛になってからも影響は残り、体が弱かったり、乳量が少なかったりということが起こります。そのため、細心の注意を払って子牛を育てなくてはなりません。

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子牛の病気を防ぐために最も重要とされる換気は、ハイブリッド換気システムを導入。ものすごく大きな排気ファンが目を引きます。屋根や壁は、太陽光を取り入れられるようポリカーボネートを採用しました。まさに子牛のために至れり尽くせりな施設です。

哺乳ロボット登場!

日昭牧場では1カ月間に約25頭の子牛が生まれ、哺育舎には常時70100頭がいます。効率よく哺乳するため、哺乳ロボットを導入しています。

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このように、1頭だけ入れるブースの中に哺乳口があり、他の子牛に邪魔されずゆっくりとミルクを飲むことができます。コンピューター制御されたカラー(首輪)をつけているため、一度飲んだ子牛には一定時間たたないとミルクが出ない仕組みになっています。
ちなみにこのメーカーの哺乳ロボット、日昭牧場が十勝初導入なんですよ。

生まれて3日間はとにかくかわいがる!

さまざまな工夫を凝らした哺乳舎ですが、一番大切なのは「しっかりと子牛の様子を観察すること」に他なりません。人間の赤ちゃんと同じく、ちょっとした下痢や風邪が命取りになるので、よく見て対処することが必要です。日昭牧場ではリーダーのもと、主に3人のスタッフが子牛の世話をしています。

牛が人を好きになってくれるよう、生まれて3日間はとにかくかわいがる」を合言葉に、日々子牛のお世話をしています。まあ、ミルクのにおいがする子牛は無条件でかわいいので、全然苦になりませんけどね!